
競輪で選手が使用する自転車は、一般的に「ピストバイク」と呼ばれます。
見た目はシンプルで無駄のないデザインですが、その性能は市販の自転車とは大きく異なります。
競輪は公営競技であるため、不正や機材差による有利・不利を防ぐために、自転車には厳しい規格が設けられています。
つまり、すべての選手が「同じ条件」で戦えるように統一されているのです。
目次
競輪用自転車の基本構造と特徴
1. ギアは固定式(変速機なし)
競輪用自転車は「固定ギア」であり、変速機が一切搭載されていません。ペダルと後輪が直結しているため、ペダルを止めると車輪も止まります。この仕組みにより、選手は繊細なスピードコントロールが可能になります。
2. ブレーキは装備されない
競輪場の走路(バンク)は競技専用であり、公道とは異なり安全が確保されています。そのため、競輪用自転車にはブレーキがありません。減速や停止はペダル操作による脚力コントロールで行います。
3. 軽量かつ高剛性のフレーム
フレームはクロモリ(クロムモリブデン鋼)製が主流で、軽量ながら強度が高い素材です。カーボン素材のように軽さ重視ではなく、耐久性と安定性を重視しています。選手が全力で踏み込んでもフレームがよれないように設計されています。
4. ホイール・タイヤ
ホイールは前後ともにスポーク式で、リムはアルミ製が基本。タイヤは幅22mm程度の細身で、高いグリップ性能を持つ専用のものが使われます。
5. サドルとハンドル
サドルは硬めで、長時間の快適性よりも瞬発力に適した形状です。ハンドルはドロップハンドルで、低い前傾姿勢を取り、空気抵抗を最小限に抑える設計になっています。
日本競輪の規格と統一ルール
競輪用自転車は「日本自転車振興会(現在のJKA)」が定めた規格に従う必要があります。
フレーム寸法や形状は統一
使用できるパーツメーカーは限定
ホイール・ギア比も制限
このルールにより、選手は機材性能の差で勝負が決まることがなく、純粋に「脚力と戦術」で競い合うことになります。
市販のロードバイクとの違い
項目 | 競輪用ピストバイク | 市販ロードバイク |
---|---|---|
変速機 | なし(固定ギア) | 多段変速 |
ブレーキ | なし | 前後に装備 |
素材 | クロモリ中心 | カーボン・アルミが主流 |
重量 | 約7〜9kg | 約6〜8kg |
価格 | 約50〜100万円 | 約20〜150万円 |
用途 | 競技専用 | 公道走行可 |
競輪用自転車は「競技場専用」であり、公道を走ることはできません。
一方でロードバイクは公道利用を前提に作られているため、ブレーキや変速機が標準搭載されています。
競輪用自転車の価格とメーカー
競輪選手が使用する自転車は高額で、フレームだけで30万〜50万円、完成車になると100万円を超える場合もあります。
代表的なフレームメーカーには次のようなものがあります。
NJS認定メーカー
ブリヂストン
Kalavinka(カラビンカ)
Nagasawa(ナガサワ)
Bomber Pro
Level など
「NJSマーク」が付いたフレームやパーツのみが競輪で使用可能です。この認定は厳格であり、選手は必ず規格を満たした自転車を使用します。
選手のセッティングと個性
同じ規格の自転車を使っていても、サドルの高さやハンドル位置、ギア比の選択などによって乗り味は大きく変わります。
短距離型の選手:重いギア比を選び、一気に踏み込むセッティング
持久力型の選手:軽めのギア比を選び、長い距離で粘るセッティング
こうしたセッティングの違いも、レース観戦の面白さの一つです。
過去から現在への進化
競輪創設期には、一般的な自転車をベースにしたシンプルなマシンが使われていました。
しかし技術の進化とともに、フレームはより軽量化・高剛性化し、空気抵抗を減らす設計も取り入れられてきました。
ただし「公平性」を重視するため、ロードレースのように自由に最新技術を導入することはなく、一定の規格に縛られ続けています。このバランスこそが競輪の魅力です。
競輪用自転車を体験する方法
一般の人が競輪用ピストバイクに乗ることも可能です。
自転車競技場の体験イベント
競輪学校の見学・体験走行
中古市場でのピストバイク購入
ただし、公道では使用できないため、必ず専用のバンクやサイクル競技場で走行する必要があります。
まとめ
競輪用自転車は、選手の実力を公平に競わせるために特別な規格で作られた「競技専用マシン」です。
固定ギア&ブレーキなし
クロモリ製フレームで高剛性
厳しいNJS認定ルール
市販ロードバイクとは用途も構造も異なる
完成車価格は100万円以上も珍しくない
観戦するときは、選手の脚力だけでなく「どんなセッティングの自転車を使っているか」に注目すると、より深く楽しむことができます。